プリント基板品質考~③ スルーホール内壁と温度変化について

プリント基板品質考第三回目はスルーホール品質の重要性と、知っておきたい基礎知識についてのお話しです。

前二項でも、取り上げさせていただきましたが、弊社では、プリント基板の品質を管理する上で、スルーホールの品質を最も重視して居ます。
今回はその理由についてご理解いただく為に、まずは、基板を構成する各材料の特性とそれにより発生する現象についてご紹介いたします。(ここでは、弊社でよく取り扱っているFR-4とCEM-3について取り上げさせていただきます。)

まず前提として考えておかないとならないのが、上記のどちらの場合も、樹脂と銅箔を貼り合せた製品であるという事です。
当然全く性質の異なる材料を組み合わせている為に、温度や湿度などの環境の変化によってそれぞれの材料が異なる影響を受けると云う事です。

その端的なものとして、それぞれの材料の熱膨張係数が有ります、これは温度の上昇によってその物質の長さや体積がどの程度、膨張するかを示して居り、通常材料のカタログでは線膨張係数という形で樹脂部分の膨張係数が記載されていると思います。

ちなみに、この値を並べてみると以下の様になります。
・銅=16~17ppm/℃
・FR-4(一般材)縦方向=10~14ppm/℃
 横方向=12~16ppm/℃
 厚み方向=60~70ppm/℃
・CEM-3(一般材)縦方向=20~25ppm/℃
 横方向=23~28ppm/℃
 厚み方向=60~70ppm/℃

この様に、それぞれの材料(絶縁樹脂に関しては、縦・横・厚さ方向)では熱膨張に関して異なる性質を持っており、互いに接している材料の境界には値の大小の差の分だけストレスが発生します。

プリント基板は、その製造過程や部品実装時の過熱、環境温度の変動、動作時の発熱等の温度変化によって銅配線部と樹脂部の間に程度こそ違いますが頻繁にストレスが発生し(樹脂部にはこれに吸湿による膨張も加わり)ます。
その中でも特にプリント基板の厚み方向で銅・樹脂間の熱膨張係数の開きが最も大きい事が分かります。(このストレスは、より高い熱膨張係数を持つ樹脂の厚み方向に銅箔が引っ張られる形で働きます。)

また、プリント基板の面方向の銅箔は材料銅箔の厚みにもよりますが、一般的な貫通基板の場合外層で33~50μm程度、内層で35~70μm程度の厚みが有ります。
スルーホールの内壁に関しては一般的には、15μm程度の最小値で管理しているメーカーが多く、より薄い厚みしかない銅に大きなストレスが発生してしまう構造になっています。(現実には、これに搭載部品も絡んでくるので、更に複雑になりますがまた別の機会に詳しく述べさせていただきます。)

この様なプリント基板の構造から弊社では基板の最大のウィークポイントをスルーホール内壁と考え(普通に製造され、普通に使用されるプリント基板では、スルーホールのバレルクラックによって壊れるのが普通)、用途・使用環境に合わせた、材料選定や、プロセス管理、チェック手法等を重要したもの造りを心掛けています。
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